LOGLOG

『映画』や『ガジェット』や『ものづくり』のことなど、気になった事をまとめていきます。

『ベイマックス』が『ものづくり』に関わる人にオススメだという話

すっかりお正月気分も抜け切った頃合いですが、年始に観たベイマックスがあまりにも素晴らしく、とにかくものづくりに関わる人にオススメの映画だったので、今更ながらまとめておきたいと思います。

 

 以下、ほんの少しのネタバレを含みますのでご注意ください。
------

『ベイマックス』では、ケア・ロボットであるベイマックスそのものを始めとして、作中に様々な架空の最新技術が登場します。

今回感動的なのは、その最新技術が「魔法のような技術ではなく技術として描かれている」というところ。

 

例えばピクサー映画である『WALL・E(2008年)』は、長い時を経て、ロボットに宿るはずのない「心」が宿った、というお話でした。


ウォーリー WALL・E ディズニーCGアニメ(予告編) - YouTube

 

WALL・Eをはじめとして、これまでの「ロボットが主人公(ないし正義側)として登場する映画」は、「技術では説明が出来ない魔法のような事が起きる(ex. 心が宿る、人の心を完全に理解する)」というストーリーが多かったように思います。

アンドリューNDR114 - Wikipedia

A.I. - Wikipedia

(ベースはあくまでも「ピノキオ」なのかもしれません)

 

これに対してベイマックスは、最高に可愛く、驚くほど高性能に描かれますが、あくまでも「対象をケアする・守る」ということを目的に働くロボットであり、心が宿ったり、人の心を完全に理解したりする、という描写はありません。

可愛さの方向性も、ウォーリーというより「ルンバ」なんかに近い気がします。目的達成のためにまっすぐ、時に不器用に頑張る可愛さ、という感じとか。

iRobot ロボット掃除機ルンバ 公式サイト

ルールを破れないロボットだからこそ、一貫した「正義」を貫けるベイマックス。
制作者である「タダシの考え」を厳守するベイマックス。
そんなベイマックスが困惑するからこそ、
ヒロは自分が間違っていたことに気づくことが出来るし、
そんなベイマックス相手だからこそ、
最後の「ベイマックス、もう大丈夫だよ」という発言があそこまで感動的なのだと思います。

そしてそんなロボットであるベイマックスに対して、能動的に「人格」を見出だし
「6人目のヒーロー」として対等に扱う、という主人公チームのあり方が、超今っぽい!!
すごく健康的な技術とのつきあい方だと思いました。 

また、タダシがベイマックス制作のために試行錯誤している様子の泥臭い努力の描写が、作品に出てくる「すごすぎる最新技術」のすべてに「人の手のあと」というか、「努力の痕跡」というか、「この研究室で作ったものなんだ」「このキャラクターが頑張って作ったんだ」という説得力を持たせていると感じました。

 

f:id:t0rakeina:20160328201351j:plain

 

ベイマックスという映画は「どんなにすごくても、技術とは人が作るものである」という、超普通の、でもちょっと忘れがちで、すごく大事なメッセージを見る人に提示しているのではないでしょうか。

そして映像における「魔法表現のドン」であるディズニーが、超真面目に技術者や技術の生まれる現場をリサーチして、このような映画を制作するということは、
「正しく使われる技術は、魔法と同じくらい夢と希望に溢れている!!というかもはや魔法だ!!」と宣言しているようなもの…なのでは??

(もちろんこれだけがこの映画のメッセージではないと思いますが)

 

ベイマックスの「やわらかなロボット」というアイデアは「カーネギーメロン大学のロボット工学の研究」を基にしているそうですし、「柔らかいハードウェア」は、今まさにホットな研究テーマです。


Ephyra - YouTube

 

ヒロの作る『マイクロボット』はMITで取り組まれている「ラディカル・アトムズ」というコンセプトを彷彿とさせます。


理念駆動:タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ 石井裕教授講演レポート |2013 |イベント・セミナー |株式会社ロフトワーク

 

また「ものづくりの環境」の描き込みとして、3Dプリンタなどのファブリケーションマシンや、半田ごてやサードハンドなどの工具描写もばっちりでした。


モノづくりが変わる!デジタルファブリケーションの未来 - NAVER まとめ

 

笑いあり涙ありのストーリーも、画の美しさも、アクションも全部最高でしたが、何しろこの「技術も魔法である」という姿勢に、泣かされてしまいました。

 

そしてさらに最高なのが、これが「こども達も大好きなディズニー映画」であるということ!!
キッズ達が、「自分で手を動かすことの可能性と楽しさ」に映画を通じて触れられるということ!!

 

2015年、一発目からすごい映画を観れてしまった気がしています…!

しかし、ベイマックスには他にも、
「サンフランソウキョウのかつて無いほど素晴らしい『トンデモアジア』描写!」
「ディズニーが初めて『許しのストーリー』を作った!」
などなど、語りたい要素があります。
こちらについても、まとめられたらと思っております〜

ゴーンガールも最高だし、
ホビットも完結編として素晴らしかったけど、
「ものづくり」してる人、絶対ベイマックスがオススメです!!