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「どうしてもノレませんでした…」 映画 ワンダーウーマン 感想

注意:この記事は、映画「ワンダーウーマン」にいまいちノレなかった人間が書いたものです。また文中に作品のネタバレも含みます。ご注意下さい。

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ワンダーウーマン観てきました

アメリカに来てからこれで映画館で映画を観るのは5本目、こちらでは随分前から公開していたのに見逃していた「ワンダーウーマン」を観てきました。
正直な感想は「私向けじゃねえ!!!」でした。

普段あまり批判的なレビューは書かないようにしているのですが、特に今作はあまり批判的な声を聞かないので、自分の思った事を素直に書いておこうと思います。

好きだったところ

ガル・ガドットの圧倒的美しさ

そこに存在するだけで華のある俳優さんでした。戦うシーンでは野生動物のような凛とした美しさを讃え、お茶目な天然シーンもばっちりハマる、ものすごいチャームだと思います。ワイルドスピード常連組ですが、これを期に今後他の映画にもバカスカ映画に出てほしい!!
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楽しいアクションシーン

「スローモーションはいい加減どうなん?ザックよ…」と思わなくもないですが(今回どのくらいザック・スナイダーが関わっているか分かりませんので…)、ガル・ガドットの美しさと相まって個人的にはアガりました。とかく見辛い事の多い戦時下の戦闘シーンもかなり観やすかったし、狭い場所/広い場所両方の見せ場もあるので、痒いところに手が届くなーという印象。テーマソングがかかるタイミングなども、コテコテだけどとても好き。
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いい感じのキャスティング

クリス・パイン演じるスティーブ・トレバーを始め、主役以外のキャラクターたちも、ぴったりな配役で楽しかったです。個人的には映画 コングレス未来学会議 以降、ロビン・ライトに魅了されっぱなしなので、今回のアンティオペ(ダイアナの叔母)の役所も嬉しかったです。ギラギラした戦士顔が素敵。
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映画『コングレス未来学会議』公式サイト

今回の敵役であるドクター・ポイズンを演じたエレナ・アナヤも気になりました!(キャラクター造形はともかく、このキャラクターの置かれたポジショニングには思うところがありますが…)

そう!良いところは色々ある!ただ!ただ、私はワンダーウーマンの主人公ダイアナの「主人公像」にさっぱりノレませんでした。
以下、その理由を考えてみました。

強い女性としてのワンダーウーマン

おそらく本作の一番のセールスポイントである「女性のスーパーヒーロー」という設定自体が、正直私にはあまり目新しいものに感じられなかったことが、私が肩透かし感を感じた大きな要因だと思われます。
セーラームーンレイアースを嗜み、カードキャプターさくら少女革命ウテナを履修し、プリキュアにも手を出している私にとって、「強くて可愛い女の子」「女の子が正義のために戦う」「女の子が友達や恋人を守る」というのは、物語の中ではごくごく普通。またスタジオジブリという巨大なリファレンスもあり、そちらはそちらで強い女性のオンパレード。特にそちらからはクシャナ(特に原作版)やエボシ御前などの「大人の強い女性」というキャラクター像もインプットされています。
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日本の作品ばかりになってしまいましたが、ディズニーのディズニープリンセス達も、時代のなかで「逞しい女性像」を作ってきていると思うし、最新作であるモアナと伝説の海のモアナのフラットさは、その究極系と言えるのではないでしょうか?
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こういった自分の中のリファレンスと比較して、ワンダーウーマンのダイアナは、新鮮なキャラクターというよりは、ある種おなじみのキャラクターでした。お姫様で外の世界を知らず、正義感が強く自立していて、自ら進んで戦地に赴く…「スーパーヒーローである」「第一次世界大戦下が舞台」という事を除くと、よりおなじみ感が強まるかと思います。(舞台設定は重要な要素なのでキャラクターからそれを引き算するのは難しいとは思いますが)
最大の違いはターゲット層の差かな?とは思うのですが、前評判から「新鮮な女性ヒーロー像」を期待していた私は、ちょっと「あれー…」となってしまいました。

主人公としてのワンダーウーマン

とは言えおなじみの主人公だからノレないなんてことも無いはず…なのですが…。ここからは特に個人的な趣向の話になりますが、ダイアナの性格が私にはちょっとダメでした。 ダイアナを見ながら真っ先に思い出したのは、風の谷のナウシカナウシカ20世紀少年のカンナ、そしてワンピースのルフィなど。いづれも周囲を引っ張る力と魅力に溢れ、タフで頑固ながらも周囲の理解を得て目標へと突き進む、根強い人気の主人公達です。人気の理由もすごくわかります。ただ、私は彼らを見ていると、「頑固でメンタルもフィジカルも超強い人、何もかもハンドリングできちゃいそうでちょっと怖い!」と思ってしまうのです。危険を顧みず突き進む姿にも「やー…そりゃあんたは大丈夫だろうけど他の人は付いてくの大変なんじゃない?」みたいな。 個人的に封神演義太公望のような主人公、また同じ20世紀少年では響子が、風の谷のナウシカだったらクシャナの方が好き。こればっかりは完全に個人の好みの問題なのですが、立ちはだかる困難を前に、格好良くない姿も晒しながら、なんとか進もうとしている人間臭いキャラクターが好みなので。 f:id:t0rakeina:20170828091018j:plain

神話としてのワンダーウーマン

さらにダイアナは、私が思い起こした主人公達と比べても、より汚れなき人/無垢な人として描かれていたと思います。
ダイアナはスティーブと会うまで男性という生き物にあったことがありません。なので「男性や外の世界に関する天然っぽい質問をスティーブにぶつけて、彼や周囲の人が面を食らう」というコミカルなシーンが多々出てきます。「大人の女性が主人公である」ということがこの映画の一つのセールスポイントになっていたかと思いますが、彼女のそれらの描写は、演じている俳優の年齢などとは関係なく、幼さや処女性を私には感じさせます。もっと言えば「神話っぽいキャラクター」という感じ。美しさへの言及も多いし。
ストーリーが進むに連れ、ダイアナとスティーブは戦いのなかで心を通じあわせ、一晩を共にします。そしてスティーブは、ダイアナの戦いとは違うレイヤーの問題を解決するために、自分を犠牲にする事を選びます。(ちなみに、この戦いのレイヤーがはっきり違う事と、ここで最後にスティーブがダイアナに言う「僕は今日を守る。君は世界を守れ」というセリフは好きでした。スティーブはダイアナのような圧倒的な力を目にしても、腐らず冷静に、自分にできる最大限の事をしようとしてる感じが良かった!)
ダイアナはスティーブの死を知り、自身の真の力に覚醒。彼を失った事への怒りに飲まれそうになるものの、彼から受け取った言葉や愛情から人間と愛を信じる事を決め、圧倒的な力で大ボスを倒します。結局ダイアナの初恋は、悲劇的ながらも自らの成長へダイレクトで繋がっており、また悲劇的故にパーフェクトなものへと昇華されたように見えました。死んでしまった人には敵わないし、生きていれば2人の間にいずれ起きたかもしれない問題(仲違いや、スティーブだけが老いていく事など)とも無縁。なんか…とてもクリーン…だなと…。
もちろん神話的なことが悪いということではありません。(作劇的にハラハラしづらいという弱点はあると思いますが…) ただ、戦時下を舞台にここまでホコリひとつ被らないダイアナに「うーーーん、ノレない!」と思ってしまいました。他のキャラクターは様々な苦悩や暗い過去を抱えているような描写(スティーブのスパイ活動では色々あったっぽい等)があるので、意図的に「浮いてる感じ」を演出しているとは思うのですが…

そもそも、外の世界から「戦争という恐ろしいものがあるから今すぐ止めなきゃ!」と一個人ではなかなか抱けないような大きな目標を掲げてやって来たのに、第三者的介入では無くたまたま知り合ったスティーブの側に完全に仲間入りするのにも少し「?」になりました。これ、出会った順番がドイツ軍の方が先で、そちら視点の説明を受けていたらそっちに加担したの?とか。ものすごく気になるといわけではないのですが…序盤だったのでちょっと引っかかりました。

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私はこの映画のヒットが「後退」だとは全然思いません。神話的にスーパーな女性ヒーローというキャラクターがいること自体は「色々なキャラクター像の1つ」として、とてもいい事だと思います。(アナ雪を観た友人から「王子様を待ってる女は絶対にダメって言われてる気がして辛かった」という感想を聞いたこともあり、色々なキャラクターが存在することが重要なんだなーと改めて思ったりしたので) ただ、ダイアナが「先進的なキャラクター」と言われたり、映画ワンダーウーマン自体が「新しい時代の夜明けの象徴」と言われる事には、やっぱりちょっと違和感があります。 私には分からないコンテクストからの評価もあるとは思いますが…(女性監督など)

また、同時期に公開されているスパイダーマン ホームカミングでは、「高校生」「15歳」などの若さや爽やかさがプッシュされつつも、終盤、ヒーローとして生きる上でのかなり苦しいジャッジを迫られるシーンなどが用意されていました。あのシーンで、ピーターは「決定的に普通の男の子に戻れなくなったな」と思うし、完全にクリーンで無垢な少年ではいられなくなったと思います。そう思うとこの2作はかなり対比的…!

www.spiderman-movie.jp

本当にこの夏は、DC・エクステンディッド・ユニバースとマーベルシネマティックユニバースの違いが明確になった夏だったな〜と思います。DC・エクステンディッド・ユニバースは、思い起こせば、マン・オブ・スティールもバットマンVSスーパーマンも神話めいているよな〜

色々な意味で重要な作品ではあるとは思うのですが、私個人としては「あまりノレない主人公の、クラシックな作りのヒーロームービー」でした。