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『映画』や『ガジェット』や『ものづくり』のことなど、気になった事をまとめていきます。

4DXを観て考える、映画と身体について[その2]

この記事は前回のつづきになります。 

世界初!タイヤの気持ちになれる映画「イントゥ・ザ・ストーム」

(以下、ネタバレはほとんどありませんが「4DX演出バレ」はあります)

今回4DXで鑑賞したのは「イントゥ・ザ・ストーム」


映画『イントゥ・ザ・ストーム』予告編 - YouTube

なんと「2Dの4DX上映」という「1次元足りないのでは?」というセッティングの上映だったのですが、「まあ、あれだけ客席揺れたら3Dメガネは無理だろうな」と思います。
あらすじを簡単に説明すると、

 映画「ツイスター」などでもおなじみの『ハリケーン・ハンター』と『シングルマザー美人科学者』が、世紀の巨大竜巻に遭遇!

町の人々(地元高校の教頭先生とその息子達と彼女、馬鹿ニートユーチューバー×2など)と合流しながら、なんとかサバイブする!!

 という感じのいわゆるジャンル映画で、「ファウンド・フッテージ」や「POV方式」などと呼ばれる手法で撮影されています。

ホラー系映画がたくさん撮られてる手法で、最近だと「クロニクル」が有名ですね。

 


Twister Trailer - YouTube

元祖竜巻パニック映画。かの有名な「牛が飛ぶシーン」は、イントゥ・ザ・ストームでもパロディしてたりします。

 


『クロニクル』予告 - YouTube

デイン・デハーンの出世作。 カメラでの撮影がそのまま作品テーマになってる。キング・オブ・『ファウンド・フッテージ(現時点)かと!

 

これ、最初は「お、4DXと相性いいじゃん」と思いました。
ゲームのFPSモノよろしく「観客のアバター」 = 「映像を撮影しているカメラマン」と感じられるシーンでは、ものすごく揺れる座席で「なるほど〜!!、私は今コイツ(カメラマン)か〜!!」と、かなりノれました。

 

しかし、同時にこの手法、『関係性の歪み』も生み出します。
「ファウンド・フッテージ」「POV方式」で大事になるのは、やっぱりカメラ。
これは「自然災害もの」というジャンルや、「ハリケーン・ハンター」という主人公達の設定ともぴったりなので、この映画には実に様々なカメラが、様々な形で登場します。 普通のテレビ用っぽいビデオカメラ、高校の卒業式撮影用の家庭用ハンディーカムはもちろん、馬鹿ユーチューバーは、親の金で買ったであろうGoProTHETAっぽいカメラを持ってたりします。


GoPro 公式ウエブサイト。世界一多才なカメラ


RICOH THETA

こういうガジェットがちゃんと出てくるのは、ちょっとテンション上がる。

 

 なかでも印象的なのはハリケーン・ハンターの親分、ハリケーンジャンキーピートさんのご自慢の改造車『タイタス』に取り付けられた無数のカメラ達。

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画像ではよくわかりませんが、凄い数の監視カメラがついているスーパー改造カー。

 

タイヤにまで取り付けられた監視カメラ(USBカメラ)は、ハリケーン・ハンターの親分ピートの気合いが感じられて大変結構なのですが、そのUSBカメラの映像が使われると、4DXは余計なことに、「そのUSBカメラが感じているであろう振動」を客席に伝えようとしてきます。

竜巻によって荒れ果て、ぐちゃぐちゃになった道路を走るタイタス号の「タイヤのカメラ目線映像」に合わせて、小刻みにガンガン揺れる客席。
「観客のアバター」 = 「タイタス号のタイヤ(向かって左側前輪)」としか感じられません。

しかもタイタス号には、どんな巨大竜巻にも吹っ飛ばされないためのギミックとして、「タイヤ前輪と後輪の間から巨大なペグ的なものが飛び出し、地面にブッ刺さる」というシーンが、見せ場として結構出てきます。

このギミックを大迫力で伝えるために、このシーンの度に観客は「タイタス号のタイヤ(後輪)にされます。しかも後半はこの『無機物憑依シーン』が繰り返されるので、もうなんかそれはそれでアガりました。

 

これから4DXはどうなるのか 

タイヤ役をやらされる事以外にも、4DXに対して「どうなの?」と思うポイントはたくさんあります。

・「馬鹿ユーチューバーがふざけてバイクでプールに飛び込んだ時の振動」と、「史上最大の竜巻の振動」が(瞬間的には)ほぼ一緒なのはいかがなものか?

・雨の再現機構が「前の席から水が上向きに吹き出す」というシステムなので、降り注ぐ「ちょっと前」に完全に目視できてしまう。

・雷の演出として赤いフラッシュが何回か使用されていたが、別に映画の投影面全体が眩しくなるので必要性を感じない。(むしろ投影面以外が明るくなると観づらい)

・匂いの演出がとにかく難しそう。「イントゥ・ザ・ストーム」では冒頭の朝食シーンが最高に臭くて、私はそれ鼻が利かなくなった。

 

「まあ監督が4DXの演出までは管理できないからしょうがないよね」とは思いつつも、3D映画での「アバター」みたいな、「4DX超特化映画」は観てみたい気がします。
しかし、4DX超特化映画が出来てしまえば、「4DXの正しい使い方」が決まり、今は観る事が出来る「荒々しいトライアンドエラー」(無機物憑依など)は観られなくなるでしょう。
商業ラインで行われる、ここまでのアバンギャルドな試みは、貴重な気がするのです。

ともかく結論としては前回記事冒頭でも書いたように、

 

4DXをまた観てない人は絶対早く観た方が良い!
なぜなら、4DXとは「まだ誰も100点が出せていないテストの壮大な"実験"」だから!

 

私はこれからも、無理のない範囲で「4DXの実験マラソン」に付き合いたいな、と思います。多分100点が出たら、それがゴールなのでしょう。ゴールの存在すら怪しいですが、その男気を買いたいと思うのです。