LOGLOG

『映画』や『ガジェット』や『ものづくり』のことなど、気になった事をまとめていきます。

シンデレラ 感想

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www.disney.co.jp

一言感想

王道ストーリーを、現代のポリティカリーコレクトで整理し直した、やりすぎてない再解釈。 ケイト・ブランシェットヴィラン役と、ヘレナ・ボナム=カーターのフェアリーゴットマザーが本当にすごいので、それだけ目当てでもオススメ

ストーリーについて

ディズニーの「再解釈シリーズ」では3本目にあたる本作。 前作、前々作である「オズ はじまりの戦い」「マレフィセント」とは方向をガラリと変えて、 ストーリーは誰もが知っている「シンデレラ」そのものでした。 王道ストーリーを、現代のポリティカリーコレクトで整理し直した感じ。 主体的に考えて行動するシンデレラの姿からは 「いい男を待つのが女の幸せ」という「なんかちょっとね…」と感じる雰囲気はなく、 すごく飲み込みやすくなってます。

「悪役が実はすっごくいい人でした〜」という「マレフィセント」に対しては、「じゃあ、もうオリジナルでやれよ…」 という感想を抱いてしまいましたが、比べて今回の「シンデレラ」のバランスは好きでした。

アニメ版の売りである「動物可愛いシーン」 の代わりに、キャラクターそれぞれの掘り下げをしたのも実写ならではのアレンジでよかったです。 特に王子様、王様サイドはすごかった!感情移入しやすい! 王子様と王様、シンデレラとその両親の「親子愛」もしっかり描かれていたので、「恋愛至上主義」の偏ったストーリーになっていなかったのもすごく現代っぽい。

ネズミ達はグリーンマイルくらいの感じ落ち着いてましたが、それはそれで可愛くてよかったです。 (正直もっと抑えめでもよかったかも)

f:id:t0rakeina:20150510024951j:plain グリーンマイルのねずみ

ただ、修正した故に気になる箇所も少々。 物語中のキーワードになっていた「許す」というフレーズ、王子様に見出された後のシンデレラが言うと、「そりゃあんたもう将来安泰だからね、そりゃ許すでしょうよ…」と感じてしまいました。 アニメ版のように一切そこに言及しないか、せっかくアレンジしたんだったら、王子様に見出される前に言って欲しかったな…。

キャストについて

フレッシュなメインキャストに、手堅くかつ目新しい人員配置で固められた脇役が楽しかったです。 脇が本当に堅い! なかでもケイト・ブランシェットヘレナ・ボナム=カーターの大御所女優の双璧がすごかった。

ケイト・ブランシェットの美しさが怖さに直結してる感じが素晴らしかったです。 シンデレラの父への目線とか、アニメ版には無かった人間味もプラスされて、ますます魅力的でした。エリザベス女王は伊達じゃない(あとホビットガラドリエル様)

エンドロールの名前一発目が「ケイト・ブランシェット」でびびった。(しかもフォント数がデカイ)

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まさに横綱相撲

ヘレナ・ボナム=カーターは正体不明のチャーミングさを発揮して、予想を遥かに超えるハマりっぷりでした。 「イントゥ・ザ・ウッズの魔女役メリル・ストリープと、キャスティング逆じゃね?」とか思ってゴメンなさい…

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ちょっと前の魔女役

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今回のお姿

シンデレラ役のリリー・ジェームズも勿論すごく可愛かったです。特に、セーラームーンプリキュアばりの豪華な『変身バンク』は見所。(尺の異様な長さも素晴らしい) 灰を被ったり、大雨に打たれてもすごく絵になる、アクション俳優系美女でした。

映像について

公開前からプッシュポイントになっていた衣装は、やっぱり目に嬉しい美しさでした。 シンデレラのドレスが、「母のドレス」+「父を象徴する蝶」で構成されていて、ストーリーテリングに衣装が生きてるのが良かったです。

ただ個人的に、この辺はターセム・シン監督の「白雪姫と鏡の女王」の石岡瑛子衣装がすごく好みだったので、どうしても比べてしまう…

映像で一番楽しかったのは、馬車がかぼちゃに戻るシーン。 実写でやると立派なパニックムービーでした。 しかも見た後アニメ版と見比べたら、結構正確に再現していたのでさらにびっくり。 リスペクトを感じます。

「もう最高!傑作」とまではいかないものの、「だれもが知っている話」をここまで新鮮に楽しめるとは思っていませんでいた。気楽な気持ちでオススメです。

『ベイマックス』が『ものづくり』に関わる人にオススメだという話

すっかりお正月気分も抜け切った頃合いですが、年始に観たベイマックスがあまりにも素晴らしく、とにかくものづくりに関わる人にオススメの映画だったので、今更ながらまとめておきたいと思います。

 

 以下、ほんの少しのネタバレを含みますのでご注意ください。
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『ベイマックス』では、ケア・ロボットであるベイマックスそのものを始めとして、作中に様々な架空の最新技術が登場します。

今回感動的なのは、その最新技術が「魔法のような技術ではなく技術として描かれている」というところ。

 

例えばピクサー映画である『WALL・E(2008年)』は、長い時を経て、ロボットに宿るはずのない「心」が宿った、というお話でした。


ウォーリー WALL・E ディズニーCGアニメ(予告編) - YouTube

 

WALL・Eをはじめとして、これまでの「ロボットが主人公(ないし正義側)として登場する映画」は、「技術では説明が出来ない魔法のような事が起きる(ex. 心が宿る、人の心を完全に理解する)」というストーリーが多かったように思います。

アンドリューNDR114 - Wikipedia

A.I. - Wikipedia

(ベースはあくまでも「ピノキオ」なのかもしれません)

 

これに対してベイマックスは、最高に可愛く、驚くほど高性能に描かれますが、あくまでも「対象をケアする・守る」ということを目的に働くロボットであり、心が宿ったり、人の心を完全に理解したりする、という描写はありません。

可愛さの方向性も、ウォーリーというより「ルンバ」なんかに近い気がします。目的達成のためにまっすぐ、時に不器用に頑張る可愛さ、という感じとか。

iRobot ロボット掃除機ルンバ 公式サイト

ルールを破れないロボットだからこそ、一貫した「正義」を貫けるベイマックス。
制作者である「タダシの考え」を厳守するベイマックス。
そんなベイマックスが困惑するからこそ、
ヒロは自分が間違っていたことに気づくことが出来るし、
そんなベイマックス相手だからこそ、
最後の「ベイマックス、もう大丈夫だよ」という発言があそこまで感動的なのだと思います。

そしてそんなロボットであるベイマックスに対して、能動的に「人格」を見出だし
「6人目のヒーロー」として対等に扱う、という主人公チームのあり方が、超今っぽい!!
すごく健康的な技術とのつきあい方だと思いました。 

また、タダシがベイマックス制作のために試行錯誤している様子の泥臭い努力の描写が、作品に出てくる「すごすぎる最新技術」のすべてに「人の手のあと」というか、「努力の痕跡」というか、「この研究室で作ったものなんだ」「このキャラクターが頑張って作ったんだ」という説得力を持たせていると感じました。

 

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ベイマックスという映画は「どんなにすごくても、技術とは人が作るものである」という、超普通の、でもちょっと忘れがちで、すごく大事なメッセージを見る人に提示しているのではないでしょうか。

そして映像における「魔法表現のドン」であるディズニーが、超真面目に技術者や技術の生まれる現場をリサーチして、このような映画を制作するということは、
「正しく使われる技術は、魔法と同じくらい夢と希望に溢れている!!というかもはや魔法だ!!」と宣言しているようなもの…なのでは??

(もちろんこれだけがこの映画のメッセージではないと思いますが)

 

ベイマックスの「やわらかなロボット」というアイデアは「カーネギーメロン大学のロボット工学の研究」を基にしているそうですし、「柔らかいハードウェア」は、今まさにホットな研究テーマです。


Ephyra - YouTube

 

ヒロの作る『マイクロボット』はMITで取り組まれている「ラディカル・アトムズ」というコンセプトを彷彿とさせます。


理念駆動:タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ 石井裕教授講演レポート |2013 |イベント・セミナー |株式会社ロフトワーク

 

また「ものづくりの環境」の描き込みとして、3Dプリンタなどのファブリケーションマシンや、半田ごてやサードハンドなどの工具描写もばっちりでした。


モノづくりが変わる!デジタルファブリケーションの未来 - NAVER まとめ

 

笑いあり涙ありのストーリーも、画の美しさも、アクションも全部最高でしたが、何しろこの「技術も魔法である」という姿勢に、泣かされてしまいました。

 

そしてさらに最高なのが、これが「こども達も大好きなディズニー映画」であるということ!!
キッズ達が、「自分で手を動かすことの可能性と楽しさ」に映画を通じて触れられるということ!!

 

2015年、一発目からすごい映画を観れてしまった気がしています…!

しかし、ベイマックスには他にも、
「サンフランソウキョウのかつて無いほど素晴らしい『トンデモアジア』描写!」
「ディズニーが初めて『許しのストーリー』を作った!」
などなど、語りたい要素があります。
こちらについても、まとめられたらと思っております〜

ゴーンガールも最高だし、
ホビットも完結編として素晴らしかったけど、
「ものづくり」してる人、絶対ベイマックスがオススメです!!

自作妖怪ウォッチから考える「『欲しいものが手に入らない』という贅沢な時間」について

少し前に『自作妖怪ウォッチ』というのが話題になりました。

入手困難で自作!?皆の妖怪ウォッチがなんか凄いw - NAVER まとめ

入手困難な「妖怪ウォッチ」を自作してみるお父さんお母さんが続々あらわれる - ねとらぼ

 妖怪ウォッチに関して説明ができる程詳しくはないのですが、「ポスト ポケモン」として、ゲームにアニメにと、怒濤の勢いみたいですね。

テレビ東京・あにてれ 妖怪ウォッチ

ド直球ポケモン世代としては、「断固ポケモン党!」と思っていたのですが、ジバニャンとコマさんが可愛い。

 

この妖怪ウォッチの関連おもちゃ『妖怪ウォッチ』が人気過ぎて入手困難となり、「それならば!」と手作りするキッズとその親御さんが続出しているらしいのです。

Amazon.co.jp: 妖怪ウォッチ DX妖怪ウォッチ タイプ零式: おもちゃ

 

この一連の流れ、「なんか既視感あるな…」と思っていたのですが、90年代後半のたまごっちブームの際、自分も『自作たまごっち』を作った事を思い出しました。

 

たまごっちと私

私が小学校3~4年生の頃、たまごっちは人気の絶頂を迎えていました。
どのくらい流行っていたかというと、私が「高周波の音を出す蚊よけグッズ」を身につけていると、かなり高齢のおばあちゃんから「『何っち』を育ててるの?」と訪ねられるレベル。

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コレです

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サイズ感はかなり近かった。

 

我が家は別に厳しい家庭ではなかったのですが、一人っ子の私は、両親が醸し出す「ウチの子には、出来れば『流行もの』に流されてほしくないな〜」みたいな空気を勝手に感じ取り、「買ってもらえたら嬉しいけど、別にそこまで欲しくない」とクールな意思を表明。
でも内心は欲しくて欲しくてしょうがなかったので、当時通っていたエレクトーンの先生から「ベビーシッター」として『てんしっち』をレンタルし、エレクトーン教室仲間と1週間交代で育ててたりしました。

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エレクトーンの先生ありがとう。情報通で綺麗な優しいお姉さんで、トーキングウォッチとか、シーマンのこととか教えてくれました。

 

しかしそれでも満たされない私は、なんとか「たまごっちを所有しない自分」を正当化するために、
「私はたまごっちは欲しくない。何故なら私の方が『今ある現存のたまごっち』より、もっと面白い『たまごっち』を作れるから!」
と『自作たまごっち』作りを始めました。

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私の考えた最強のたまごっち。

曖昧な記憶なので、かなり美化されている気がする。

 

歪んだ自己実現のために始めた『自作たまごっち』作りですが、設定を色々考えたり、可愛く見えるよう必死にデコったり、私の不器用さを見かねた母が色々助けてくれたり、友人が「本当にそんなたまごっちがあったらいいね」と優しい言葉をかけてくれたり…だんだん当初の目的を忘れ、『たまごっち作り』自体が目的化していきました。

今考えると、『ものづくりの楽しさ』って、こういう所に潜んでいるのかも。

私の周りにはたまたまいませんでしがた、きっと当時は何人もの子ども達が『自作たまごっち』作りに勤しんでいたことでしょう。

 


スマッポ

結構最近の『自作たまごっち』の例

 

 「憧れていた時間」について

当時小学生だった私のモチベーションを支えたのは、「憧れていた時間の長さ」だったと思います。

手に入れられなくて悶々としている時間が長かったからこそ、「もう自分で作ろう!」とやけくそになり、さらに「どうせ作るならもっと面白いものを!」と思えたのだと。

私は取り立ててクリエイティブな子どもでも、集中力のある子どもでもありませんでした。だから「長時間物欲を刺激され続ける」といった強い力に後押しされなければ、自ら手を動かすことはなかったでしょう。

そして「自分で考えたコレ、結構面白くない?」→「でも本物はもっと面白いんだろうな…」→「じゃあもっと面白い設定を…」というループを生み、この一連の出来事を今でも思い出深いものにしている…と思いたいです。

 

自作妖怪ウォッチについて

そんな小学生時代を過ごしたため、私は自作妖怪ウォッチ関連の一連のニュースを、「おおー!がんばれー!!」と、普通にポジティブに捉えていました。

なので、

【悲報】妖怪ウォッチが手に入らなくて、子供達が自作で妖怪ウォッチを作っている件 | コレスゴ!

などのネットニュースで【悲報】と報じられていたのにはちょっとびっくりしました。

 

確かに、高値の転売も許されたものではありませんし、そんな状況になってしまうほどの品薄状態自体は問題でしょう。

しかし、欲しさのあまり『自作妖怪ウォッチ』を作った子は、多分そのことを向こう10年は忘れないのでしょうし、「手作りする」事自体は、全然悲しいことではないと思います。(勿論、ネットニュースでもその部分に対して【悲報】と報じた訳ではないと思います)

「自分で作った妖怪ウォッチで、十分楽しく遊べた」

「お父さん、お母さんと作った妖怪ウォッチが、本物そっくりに出来た」

という楽しい瞬間と、

「でもやっぱり本物が欲しい!!」

という歯がゆい瞬間の両方が、たくさんの子どもたちのクリエイティビティを刺激している可能性は大です。

 


DX妖怪ウォッチを100均材料で自作してみました。 - YouTube

大人もノリノリ。子どもが「自身の興味の対象」に対して全力投球する大人を見られるのも、すごく良いだと思うし、大人自身も楽しそう。

本物の妖怪ウォッチに出来ない機能(時計)を実装してるところも凄い!

 


100均でつくる妖怪ウォッチがクオリティ高ぇ~!! - NAVER まとめ

市販にはない「女の子主人公バージョン」の手作りも!

 


【自作妖怪ウォッチ】妖怪ウォッチ零式と妖怪メダルを自作してみました - YouTube

Raspberry Pi やら、非接触ICカードリーダーやら、偏光板やらで全部載せ状態。ガワも3Dプリンタという本気ぶり。

 

こどものクリエイティビティについて

上でも書いたように、私は特別クリエイティブな子ではありませんでした。

本当に「自分で手を動かすこと」に興味がある子は、いつも何かを作ったり、何かを描いたりして、それがどんどん上手になっていきます。

そういう子を見ながら、「羨ましいけど、私には出来ないな」と思う事もあったような気がします。

そういう私が、小学生時代短い期間だけど少しクリエイティブな日々を過ごせたのは、やっぱり「『欲しいものが手に入らない』という贅沢な時間」のおかげだったと思います。

今現在、多少『ものづくり』に関わる仕事についている身としては、当事者である子ども達は辛いと思いますが、是非やけくそになって手を動かして欲しいな、と思わずにはいられません。その経験で残るものは、「おもちゃ自体が与えてくれるもの」より大きい可能性があると思うのです。

 

4DXを観て考える、映画と身体について[その2]

この記事は前回のつづきになります。 

世界初!タイヤの気持ちになれる映画「イントゥ・ザ・ストーム」

(以下、ネタバレはほとんどありませんが「4DX演出バレ」はあります)

今回4DXで鑑賞したのは「イントゥ・ザ・ストーム」


映画『イントゥ・ザ・ストーム』予告編 - YouTube

なんと「2Dの4DX上映」という「1次元足りないのでは?」というセッティングの上映だったのですが、「まあ、あれだけ客席揺れたら3Dメガネは無理だろうな」と思います。
あらすじを簡単に説明すると、

 映画「ツイスター」などでもおなじみの『ハリケーン・ハンター』と『シングルマザー美人科学者』が、世紀の巨大竜巻に遭遇!

町の人々(地元高校の教頭先生とその息子達と彼女、馬鹿ニートユーチューバー×2など)と合流しながら、なんとかサバイブする!!

 という感じのいわゆるジャンル映画で、「ファウンド・フッテージ」や「POV方式」などと呼ばれる手法で撮影されています。

ホラー系映画がたくさん撮られてる手法で、最近だと「クロニクル」が有名ですね。

 


Twister Trailer - YouTube

元祖竜巻パニック映画。かの有名な「牛が飛ぶシーン」は、イントゥ・ザ・ストームでもパロディしてたりします。

 


『クロニクル』予告 - YouTube

デイン・デハーンの出世作。 カメラでの撮影がそのまま作品テーマになってる。キング・オブ・『ファウンド・フッテージ(現時点)かと!

 

これ、最初は「お、4DXと相性いいじゃん」と思いました。
ゲームのFPSモノよろしく「観客のアバター」 = 「映像を撮影しているカメラマン」と感じられるシーンでは、ものすごく揺れる座席で「なるほど〜!!、私は今コイツ(カメラマン)か〜!!」と、かなりノれました。

 

しかし、同時にこの手法、『関係性の歪み』も生み出します。
「ファウンド・フッテージ」「POV方式」で大事になるのは、やっぱりカメラ。
これは「自然災害もの」というジャンルや、「ハリケーン・ハンター」という主人公達の設定ともぴったりなので、この映画には実に様々なカメラが、様々な形で登場します。 普通のテレビ用っぽいビデオカメラ、高校の卒業式撮影用の家庭用ハンディーカムはもちろん、馬鹿ユーチューバーは、親の金で買ったであろうGoProTHETAっぽいカメラを持ってたりします。


GoPro 公式ウエブサイト。世界一多才なカメラ


RICOH THETA

こういうガジェットがちゃんと出てくるのは、ちょっとテンション上がる。

 

 なかでも印象的なのはハリケーン・ハンターの親分、ハリケーンジャンキーピートさんのご自慢の改造車『タイタス』に取り付けられた無数のカメラ達。

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画像ではよくわかりませんが、凄い数の監視カメラがついているスーパー改造カー。

 

タイヤにまで取り付けられた監視カメラ(USBカメラ)は、ハリケーン・ハンターの親分ピートの気合いが感じられて大変結構なのですが、そのUSBカメラの映像が使われると、4DXは余計なことに、「そのUSBカメラが感じているであろう振動」を客席に伝えようとしてきます。

竜巻によって荒れ果て、ぐちゃぐちゃになった道路を走るタイタス号の「タイヤのカメラ目線映像」に合わせて、小刻みにガンガン揺れる客席。
「観客のアバター」 = 「タイタス号のタイヤ(向かって左側前輪)」としか感じられません。

しかもタイタス号には、どんな巨大竜巻にも吹っ飛ばされないためのギミックとして、「タイヤ前輪と後輪の間から巨大なペグ的なものが飛び出し、地面にブッ刺さる」というシーンが、見せ場として結構出てきます。

このギミックを大迫力で伝えるために、このシーンの度に観客は「タイタス号のタイヤ(後輪)にされます。しかも後半はこの『無機物憑依シーン』が繰り返されるので、もうなんかそれはそれでアガりました。

 

これから4DXはどうなるのか 

タイヤ役をやらされる事以外にも、4DXに対して「どうなの?」と思うポイントはたくさんあります。

・「馬鹿ユーチューバーがふざけてバイクでプールに飛び込んだ時の振動」と、「史上最大の竜巻の振動」が(瞬間的には)ほぼ一緒なのはいかがなものか?

・雨の再現機構が「前の席から水が上向きに吹き出す」というシステムなので、降り注ぐ「ちょっと前」に完全に目視できてしまう。

・雷の演出として赤いフラッシュが何回か使用されていたが、別に映画の投影面全体が眩しくなるので必要性を感じない。(むしろ投影面以外が明るくなると観づらい)

・匂いの演出がとにかく難しそう。「イントゥ・ザ・ストーム」では冒頭の朝食シーンが最高に臭くて、私はそれ鼻が利かなくなった。

 

「まあ監督が4DXの演出までは管理できないからしょうがないよね」とは思いつつも、3D映画での「アバター」みたいな、「4DX超特化映画」は観てみたい気がします。
しかし、4DX超特化映画が出来てしまえば、「4DXの正しい使い方」が決まり、今は観る事が出来る「荒々しいトライアンドエラー」(無機物憑依など)は観られなくなるでしょう。
商業ラインで行われる、ここまでのアバンギャルドな試みは、貴重な気がするのです。

ともかく結論としては前回記事冒頭でも書いたように、

 

4DXをまた観てない人は絶対早く観た方が良い!
なぜなら、4DXとは「まだ誰も100点が出せていないテストの壮大な"実験"」だから!

 

私はこれからも、無理のない範囲で「4DXの実験マラソン」に付き合いたいな、と思います。多分100点が出たら、それがゴールなのでしょう。ゴールの存在すら怪しいですが、その男気を買いたいと思うのです。

 

4DXを観て考える、映画と身体について[その1]

4DXに行ってきました

先日、少し前から話題になっていた4DXシステムで映画を鑑賞してきました。

感想としては、

 

4DXをまた観てない人は絶対早く観た方が良い!
なぜなら、4DXとは「まだ誰も100点が出せていないテストの壮大な"実験"」だから!

 

という感じです。

以下、そう感じた理由をまとめてみました。
(あくまで素人の個人的な意見です)

 

4DXとは 

4DXの詳しい説明は

映画は3Dのその先へ。『4DX』|コロナワールド

を確認して頂きたいのですが、とにかく「様々な物理的な仕掛けを使って、観客に刺激を与えて、臨場感を高める」というシステムです。

 

今回、このシステムを実際に体験してみた結果、

「映画鑑賞中に物理的な刺激を受けると、映画の内容と同じくらい『自分の身体』を意識させられる」
ということに気がつきました。
なぜそう感じるのか。『映画と身体』の関係性を整理して考えてみます。

 

 映画と身体について

例えば、
「AとBが向かい合って話している」
という映画のシーンがあるとします。

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通常の映画ではこのシーンを、
・A側視点
・B側視点
・第三者視点(フレームアウトしている人の視点)
・神様視点(上記のどれにも該当しない視点)
と色々なショットで撮影し、構成します。

 

例) A視点っぽいショット

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 例) 第三者視点っぽいショット(この辺から雑ですが…)

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 例)神様視点っぽいショット

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どの目線のカットを観ても、基本的(私の画力はとのかく)に観客は違和感を感じません。
観客は誰の目線にもなれる、「幽霊のような、神様のような状態」= 「身体を意識していない」状態なのです。

 

映画と身体について(4DXの場合)

これが4DXになると、話は複雑になってきます。
先ほどの例で言うと、

「AとBが向かい合って話している」

というシーンの続きに

「するとそこに隕石が落ちてきた!」という展開があったとします。

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※誰がなんと言おうと、隕石です! 

 

そのシーンに対して、4DXで「観客の左側から大きな振動」という刺激が与えられた場合、観客は「自分の身体と状況が近い人」に対して感情移入し、その結果、

左側から大きな振動を感じているであろう「A」を「映画内の自分のアバター」と感じる

のではないでしょうか?少なからず、私はそう感じました。

この状態で、映像が「A目線」であれば、臨場感はグッと増すでしょう。
しかし「第三者目線」だと普通 or 少しの違和感、「B側目線」だとかなりの違和感、「神様目線」だと「ハァ?」ということになってしまうのです。

 

この性質故、ディズニーランドやユニバーサルスタジオなどの「3D映像観ながらライドする」系のアトラクションでは、始めから『観客の身体ありき』なタイプが多いのではないでしょうか?
例) TDLのミクロアドベンチャーUSJスパイダーマンなど

 

アバターとか考えなきゃいいじゃん!」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、それは「4DXが与える刺激を無視する」ということであり、
「刺激に対して金を払ってる」っていう意識もあるので、かなり難しいでしょう。

 

たいぶ長くなってしまったので、その2に続きます。